ネットワークビジネス(MLM:マルチレベルマーケティング、連鎖販売取引)が「ダメ」だと言われる理由は多岐にわたり、単に違法だからという理由ではありません。合法なビジネス形態であるにもかかわらず、多くの人がネガティブな印象を持つのは、そのビジネスモデルの特性と、それに伴って発生しやすい問題点があるためです。
1. ほとんどの人が儲からない、むしろ損をする経済的リスク
報酬の仕組みがピラミッド型:
ネットワークビジネスの報酬プランは、自分が勧誘した人(ダウンライン)が活動することで報酬が得られるという階層構造です。これは、組織の最上位にいるごく一部の人間(全体の数%以下)しか高額な報酬を得られない仕組みになっています。
初期費用と継続的な出費:
多くのMLMでは、自分が製品を「愛用」することが前提となり、毎月一定額以上の製品購入が事実上義務付けられます。さらに、セミナー参加費、交通費、交際費などもかさみ、これらの出費が収入を上回るケースがほとんどです。
在庫を抱えるリスク:
報酬を得る条件として「買い込み」を勧められたり、新製品が出ると「先行投資」を促されたりして、必要のない製品を大量に抱えてしまうことがあります。
借金のリスク:
「成功できる」「借金してでもやる価値がある」といった煽り文句に乗せられ、高額なローンを組んで製品を購入したり、セミナーに参加したりして、多額の借金を抱えてしまうケースが報告されています。
2. 人間関係の破壊
友人・知人を巻き込む構造:
ビジネスの性質上、勧誘の対象はまず親しい友人、知人、家族となります。これがネットワークビジネスが最も嫌われる理由の一つです。
「隠し目的」への不信感:
「久しぶりにご飯行こう」「悩みを聞いてほしい」などと本心を隠して誘い出し、後からビジネスや製品の勧誘を始める「アポイントメントの偽り」が横行します。これにより、誘われた側は「騙された」「利用された」と感じ、強い不信感を抱きます。
関係性の悪化・断絶:
勧誘を断ると、関係が疎遠になったり、最悪の場合、絶交状態になったりすることが非常に多いです。「友達を失う」という経験談は枚挙にいとまがありません。
精神的負担:
勧誘される側は、大切な人間関係を壊したくないという思いから、興味がなくても話を聞かざるを得ない状況に置かれ、精神的な負担を感じます。勧誘する側も、断られ続けることで精神的に疲弊していきます。
3. 社会的イメージの悪さ
「ねずみ講」との混同:
合法なネットワークビジネス(連鎖販売取引)と、違法な「ねずみ講」(無限連鎖講)の区別が一般にはつきにくく、どちらも「怪しい」「詐欺」といった悪いイメージで見られがちです。
誇大広告・不実告知:
「簡単に大金持ちになれる」「病気が治る」など、製品の効果やビジネスの収益性に関して、事実と異なる、あるいは著しく誇張された説明が行われるケースが多発しています。これは特定商取引法や薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に違反する行為であり、消費者の不信感を増幅させます。
消費者庁からの行政処分:
実際に多くのネットワークビジネス企業が、不適切な勧誘行為や誇大広告を理由に、消費者庁から業務停止命令などの行政処分を受けています。これにより、業界全体のイメージが悪化しています。
4. 精神的な負担と依存
常に勧誘のプレッシャー:
報酬を得るためには、常に新規会員の獲得や製品の販売を続ける必要があります。このプレッシャーは精神的に非常に重く、燃え尽きてしまう人も少なくありません。
閉鎖的なコミュニティと依存:
一部のネットワークビジネスグループでは、成功者の言葉を絶対視させ、外部の批判的な意見を遮断するような教育が行われることがあります。これにより、自身の判断力を失い、ビジネスに深く依存してしまう危険性があります。「洗脳されているようだ」と批判されることもあります。
まとめ
ネットワークビジネスが「ダメ」だと言われるのは、単に合法か違法かという話に留まらず、そのビジネスモデルが持つ構造的な問題(ほとんどの人が稼げない、人間関係を破壊するリスク)と、それに起因する多くの社会問題や消費者トラブルが発生しているためです。
魅力的な謳い文句の裏に潜むこれらのリスクを十分に理解せず安易に参加すると、経済的損失、大切な人間関係の喪失、精神的苦痛といった取り返しのつかない事態に陥る可能性が高い、というのが「ダメ」だと言われる最大の理由です。


